コミュニケーション 生活のヒント

年賀状の経済学─手間暇を数値化する─

投稿日:2017年2月15日 更新日:

はじめに

松の内(地域差があるようですが、1月7日までを指すのが一般的)が明け、寒中見舞いを出す目安の立春も過ぎたので、ここで年賀状の費用対効果をまとめてみましょう。ここで言う「費用」とは、物的コストのみならず、時間的コストをも指します。このエントリーを読んだかたも、年賀状のコスト・パフォーマンスを再考してみてはいかがでしょうか? なお、扱うテーマを絞り込むため、本稿では仕事関係で出す年賀状については取り上げません。

「虚礼」との指摘の多い年賀状。しかし、仮に虚礼であるにせよ、年賀状は「あなたとの関係は切りたくないですよ」という、一年に一度の意思表示だということを忘れてはなりません。

ここで、Aさんが元旦に届くようBさんに年賀状を出し、BさんはAさんに年賀状を出していなかったとしましょう。この場合のAさんの相手方・Bさんの対応は以下の三通りです。

  1. 松の内に間に合うようにAさんに年賀状を出す。
  2. 松の内に間に合わないなら立春(2月4日)までにAさんに寒中見舞いを出す。
  3. Aさんに年賀状も寒中見舞いも出さない。

常識的と思われる、年賀状への対応

基本は(1)です。経験上、1,200km離れた人に出した年賀状ですら投函より4日で相手方に配達されます。Aさんからの年賀状を元旦に受け取ったBさんがすぐに返事を書き、その日のうちにポストに投函すれば、遅くとも1月5日には返礼が届きます。「礼には礼で応える」と言って良いでしょう。

(2)では「自分では出していなかった相手から年賀状が届いたから、遅れたが返事を出さねば」思っているだけ、Bさんは後述する(3)よりはマシな人物だと言えます。年賀状ではなく寒中見舞いで、非礼を詫びる文言で以って返事に代えるわけです。

返事がこないのは評価されていないから

最大の問題は(3)です。この場合、事前または事後に「失礼ながら、虚礼を排すため年賀状は出さない主義ですのでご理解下さい」などとメールかLINE、書状や電話をくれる人は稀で、こちらが年賀状を出しても何ら反応がないことが多いです。これに該当する人は、年賀状を出してくれた相手方に対して「お前はコストをかけてまで年賀状を出すに値しない人物だ」という、明確なメッセージを発していると考えましょう。この点は強調してもし過ぎることはありません。以下にその理由を述べたいと思います。

年賀状にはどれだけのコストがかかるのか

年賀状を書くのに大したコストはかかりません。冒頭で述べた通り、ここで言う「コスト」には二種類あります。

  1. 物的・経済的コスト(年賀ハガキ代とプリンターのインク代、年賀状ソフト代)。
  2. 時間的コスト(住所録の入力・改訂にかかる時間、プリンターで年賀状の表裏を印刷するのにかかる時間、添え書きにかかる時間)。

まずは(4)ですが、2017年現在、年賀ハガキは一枚52円します。また、EPSONによると、私が使っているPX-1700Fのランニング=コストは、カラー印刷の場合、一枚当たり7.3円だそうです。最近のカラープリンターのランニング=コストは似たり寄ったりでしょう。

我が家で愛用しているのは一冊398円の年賀状テンプレート本で、この本に付属している住所録ソフトで作った住所録を毎年使い回しています。詳しくは(5)で触れますが、家族で毎年300枚は年賀状を出すこともあり、年賀状ソフト代はほぼ無視できます。まとめると、私の場合、年賀状一枚あたりの物的・経済的コストは52円+7.3円=59.3円、丸めて60円となります。

続いて(5)について解説します。今の時代、パソコンで宛名書きソフトを使って相手方の住所と氏名、自分の連絡先をハガキに印刷するのが一般的でしょう。したがって、これらを手書きで行なうことは考慮せずに論を進めます。

住所録の入力・整理改定は一度やってしまえば毎年使い回しが利くため、年月が経てば経つほど時間的コストは限りなくゼロに近付きます。一人あたりの住所登録は1分もあれば終わるでしょう。電話番号やメールアドレス、勤務先などを住所録に登録した場合でも、せいぜい2分のオーダーです。

ハガキの印刷は一枚30秒程度で終わるでしょう。気の利いた添え書きには1〜2分かかるかもしれません。つまり、年賀状一枚にかかる時間的コストは最大で4分半(270秒)ということになります。

曖昧な「手間暇」を数値化する

ここで重要なのは、「4分半の作業は幾らに相当するのか?」という視点です。今までは「手間暇」という曖昧な概念でひとくくりにされ、この検討は十分になされてきませんでした。話題を簡略化するため、ここでは代表的なアルバイトだと思われる、コンビニエンス=ストアの日中の時給が800円程度だという数字を使います(本来、給料はかかった時間に対してでなく仕事の成果に対して支払われるべき性格のものですが、これだけで一つのエントリーとなってしまうため、この検討は行ないません)。270秒:x円=3600秒:800円よりx=60で、一枚のハガキ作成にかかる時間的コストは60円となります。

(4)で挙げた、年賀ハガキ一枚あたりの物的・経済的コストは60円で、(5)で求めた時間的コストは4分半で60円です。ここから、年賀状一枚にかかるコストは4分半で120円だということが分かります。つまり、年賀状を出さない人はこのコストを出し惜しんでいると言って良いのです。

年賀状への対応により、人付き合いを整理する

こういう年賀状の返礼すら出さない、自分に4分半と120円を出してくれない人に対し、毎年毎年コストをかけて年賀状を出す意義はあるのでしょうか? 私は二年までは我慢しますが、それ以降は年賀状を出さないようにしています。つまり、事実上縁を切ります。「傲慢だ」とのそしりがあるかもしれませんが、少なくとも「奴から年賀状が届いたから、何かしらの返事をしなきゃ」という、礼儀をわきまえた人との付き合いに私は集中したいのです。

こういうことを続けていると、どんどん交際範囲が狭まってくるように思われるかもしれませんが、一年に一度のことにコストを割けない人を切ったところで、さしたる人的損害にはなりません。それよりも、FacebookTwitterで繋がっている人、頻繁に電子メールやLINE、電話でのやり取りをしている人との付き合いを大事にするようにしています。


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